小学校 道徳教科書
東京書籍 新しいどうとく
百羽のツル
内容項目 | 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること |
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うつくしいもの、気高いもの |
1.本教材について
100羽のツルの渡りの途中、一羽のツルが力尽きて落ちていく。それに気づいた99羽のツルは見事なチームプレイで助けるという話。 ▼掲げるテーマは、 【廣済堂あかつき】は「美しいものにふれて」、 【東京書籍】は「うつくしいもの・・・」 【光文書院】は「本当の美しさ」。 教科書を開くとこの言葉が題名といっしょに目に飛び込む。子どもたちは「美しい」に誘導されて読んでいくことになる。 ▼落ちていくツルの心を、「みんなに助けをもとめようとは思いませんでした」「みんなのよろこびをこわしたくなかったからです」と描く。助けを求めないということが美化されている。自己犠牲に通じるものがある。 ▼この話は、擬人化されたツルの渡りの物語であり、現実の在り様とは全く異なる。この話を用いて道徳的価値を学ばせようとするとき、先頭のツルが優れたリーダーであるとか、群れは互いに気遣っているなどと、誤解させる恐れがある。ツルの渡りの実際は、次のようである。 ①実際には、渡りの先頭はリーダーではない。先頭は空気の抵抗を強く受け、疲れると後方へ下がる。後方では、前の鳥の羽ばたきで生ずる浮かせる気流に乗り体力を温存できる。このように先頭はしばしば入れ替わる。 ②途中で遅れた鳥を、群れは待ったり助けたりはしない。体力がある個体が先頭に出て全体を引っ張る形になっている。遅れた鳥に合わせることは無い。 ③どの一羽にとっても渡りは厳しいもので、重いものを足で抱えながら飛ぶとか、落下するものを背で受け止めるなどの余力はない。 ④群についていけなくなった鳥は、降りて休むことがよくある。体を休めたり餌をとったりして、元気回復すれば、上空を通過する他のグループに合流することもある。違う種類の鳥の群れに付いて行くこともある。降りた地点に留まる例もある。
2.本教材を扱う際に、特に注意すべきだと考えたこと
〇ツルの渡りを誤解させないようにすることが必要である。 〇実際のツルの渡りや生活について、写真や図鑑、科学読み物で調べ、交流するなどの学習が考えられる。 自然の在り様そのものから様々なものを感じることができるとよい。 〇テーマの言葉「美しい」に誘導されないよう注意が必要。掲げてあるテーマや設問の文字が先に目に入ることを回避する。教科書を開かず読み聞かせをするのも一案である。