小学校 道徳教科書の光村図書 きみがいちばんひかるとき(小学校)の教材、「お客様 (光村図書対応)」の内容です。

小学校 道徳教科書

光村図書 きみがいちばんひかるとき

お客様 (光村図書対応)

内容項目 主として集団や社会との関わりに関すること
規則の尊重
光村5年_ページ_001
1.資料について  本教材は「きまりの意義」と冒頭に書かれ、「“権利“と“義務“という言葉の意味を知っているかな」とこれも冒頭に問いかけられている。最後の「考えよう」では「きまりは何のためにあるんだろう」、「つなげよう」では「みんなが自分の“権利ばかりを主張していたら、どんな世の中になってしまうかな。みんなが気持ちよく過ごせるように“義務”があるんだよ」と書かれている。よくわからない点もあるが、権利ばかり主張していてはだめ、義務を守ることが必要、義務とはきまりを守ることといっているように思われる。   
 まず、「きまり」「権利」「義務」という言葉について考えみたい。   
 「きまり」にはいろいろな種類がある。自分たちで作った「約束」と言うべき「きまり」、法律や法令、本教材の遊園地のような多くの人が利用する場所であらかじめ示されているもの、学校などで多いがきまりかどうかはっきりしないがなんとなく「きまり」と考えられているもの等である。肩車はしないで欲しい、というのはおそらくあらかじめ示されているのだろう。ただ、すいているときには特に問題がないと思われるので、ゆるやかに「配慮してほしいこと」と書かれているかもしれない。いずれにせよ、「きまり」と明示されているかどうか、教材ではわからない。つまり、きまりかどうかわからないのである。いうまでもなく、「肩車はしないで欲しい」というのは法律でも法令でもないし、約束でもない。
 つぎに「権利」「義務」について考えたい。肩車をするかどうかは、法律とも法令とも関係なさそうなので、この場合の「権利」「義務」は法的なものではない。そうすると「権利」という言葉の意味は「利益を受け、または、自由に行動する資格」(日本語 語感の辞典 岩波書店)というのが一番しっくりするのではないだろうか。日常会話でもよく使うことがある。入園料を払って遊園地で好きなようにあそぶのを「権利」と言っても良い。例えば、高い入園料を払っているのだから肩車くらいする権利がある、というような言い方である。肩車くらい自由にしても良いだろう、ということである。その際「入園料」を払うことは「義務」であろう。この場合は「義務」というのは「強制される」行為である。ただ、「義務」にはもっとくだけた使い方もある。「語感の辞典」には次のような事例が載っている。「なんだか憐れぽくってたまらない。こんな時に一口でも慰めてやるのは、江戸っ子の義務だと思っている。」(『坊ちゃん』)   
 つまり本教材の「権利」とか「義務」というのは憲法の基本的な人権とか公共の福祉とか三大義務と言われる納税などの義務などとは関係ない。教材ではその点の区別が明確ではないので、子どもたちはわかりにくいのではないか。不用意に日常会話での使い方と法的な意味での使い方を混在させない方がよいのではないか。   
 ではどういう視点で考えたらよいのだろうか。
 私たちの社会では見知らぬ者どうしの間のコミュニケーションをほとんどとらない、という特色があるという(広井良典『持続可能な福祉社会』ちくま書房2006年)。「広義のあいさつや感謝等の言葉が非常に使いづらかったり、未成熟だったりする」(同書)とも言われる。ただ一つの例外は「貨幣」を媒介にした関係でつまり本教材の表題である「お客様」である場合である。この場合は一方的にサービスを提供する側が感謝の言葉や挨拶をするが「お客様」の側はほとんどそうした言葉を言わないのは私たちも経験がある。
 最近の事例だと感謝の言葉を言わないどころか、土下座を要求したり、ひどい場合には暴力をふるったりすることも報道されるようになった。つまり、「お客様」になってしまうと一方的に理不尽なことも要求したりするということである。そこにはたとえ、「お客様」であっても基本は対等な個人がいるという認識が薄いということであろう。ここには人間関係の基本があるように思われる。どのような場合でも人間関係の基本は、対等である、ということではないだろうか。お金を払うという立場になるととたんに強者の立場になったような気がしてしまうということがあるとすれば、それは違うのではないだろうか。
2.本資料を教材として使用する場合、特に注意すべきだと考えたこと  学校にははっきりしていないまま何となく、きまりとされている場合が多い。その場合は“空気を読む”ということになる。空気を読んで行動するということは結局大勢に従うということである。いじめがなくならないのも、クラスの空気を読んで大勢に従うからだといわれている。権利、義務、きまりなどの言葉を区別して論理的に考える習慣をつけたい。
指導案はPDFをご覧ください。
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