人権を大切にする道徳教育研究会は、小学校、中学校のもうひとつの道徳指導案を提示したいと考えました。

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世界人権宣言(光村対応)

1.本教材について
 資料名 世界人権宣言 光村図書 小学校6年 p.15
 関連する指導要領の内容項目 「主として集団や社会との関わり、規則の尊重、大切な権利」
 資料の解説では、光村の教科書では世界人権宣言が谷川俊太郎訳で紹介されているので、ここでも同じものを引用す   
 る
 本資料は上記のような指導要領の内容項目に位置づけられている。しかし、教科書の個々の内容を指導要領のどの項目に位置づけるかについて特に制約があるわけではない。教師は生徒の実態などを考えながら決めることができる。世界人権宣言は巾の広い内容を含んでおり、複数の内容項目に位置づけられると思われる。また、「すぐに全部を読む必要」がないこと、「身近な内容である、○印についているものを読んでみましょう」と呼びかけられていることから、必要に応じてなんども条文を取り上げると良いのではないだろうか。   
 道徳科の授業でなぜ世界人権宣言を取り上げるのか、ということはこれまでの道徳の時間ではわかりにくいかもしれないが、道徳の基礎には「自由」があることを考えれば自然なことだと思われる。なんらかの強制があれば自由な判断は出来ない、自由な判断が出来なければ責任も生じない。まずは自由があることで道徳が問題になるのである。そのことは「学習指導要領解説」に書かれている。  (該当箇所 中学校25p、小学校 26p) 資料①   
 そこで、さしあたっては、「主として自分自身に関すること」の「自主、自律、自由と責任」に位置づけて考え、「自由を大切にし、自律的に判断し、責任のある行動をすること」と関連づけたい。ただ、他の項目と結びつけて学習することもできる。例えば世界人権宣言とセットになっている人権規約は、人権規約を批准している国にとっては「守るべき国際ルール」である。   人権宣言の第1条には「自由」の大切さが宣言されている。まずはこの自由の大切さについて学びたい。   
 「自由」の大切さについては6年次の社会科でも学ぶことになっている。道徳教育は「道徳科」だけでなく、各教科でも行うことになっており、道徳の基本である「自由に考え、実行し、責任を持つこと」は社会科でも重要な項目である。道徳教育を「道徳科」に囲い込んでしまうことは想定されておらず、各教科もそれぞれの視点から道徳教育を行うことは重要である。「世界人権宣言」は社会科でも重要な教材になり得るし、社会科で取り上げる際は、人権宣言の歴史的背景などにも触れると良いと思う。人権宣言は数千万人の犠牲者を生んだ世界大戦を抜きにしては考えられないからである。また、戦争は戦闘員だけではなく、非戦闘員、とりわけ女性や子どもへの残虐な扱いを生じさせるからである。
2.本資料を教材として使用する場合、特に注意すべきだと考えたこと 社会科などの各教科なども含めて総合的な学びとして授業を組み立てたい。できれば年間計画の中に位置付けられると良いと思う。また、世界人権宣言で取り上げられている人権は、特に普遍的なものであることに注意したい。1条は、「私たちはみな、生まれながらにして自由です。」とより普遍的な人権を宣言している。
3.補足的に使った資料(社会科の教科書は教育出版のものを例として使っている)  自由という価値は「抑圧されない」「排除されない」「何かを始めることができる」ということを具体的には含んでいると考えられる。   
 小学社会 6(上)では、1930年代に中国との戦争が始まった頃から急速に自由が失われていったことを学ぶことになっている。具体的にどのように抑圧されたのか、排除されたのか、なにを始められなくなっていたのか、を学び、(下)では憲法によって「自由のめぐみをみなぎらせることが国民を幸福にするもの」(憲法前文 教育出版の教科書による要約)と考えられるようになったことを学ぶ。   
 社会科の教科書をどのように使うかは授業者の工夫一つだが、例えば人権宣言の1条と憲法前文をあわせて読み、「自由」の大切さを認識することが考えられる。
4.世界人権宣言について学ぶ計画(単元計画)
 1限目 世界人権宣言が生まれた背景について学ぶ。
  第二次世界大戦について、戦死者、非戦闘員の被害者、無差別爆撃による被害、原爆、ナチによるホロコーストなどに触れることによっておよそ10年近くにわたって人々が大きな苦難を経験したことを学ぶ。
  2限目(本時)宣言の身近な条文を学び、意味を理解する。
  条文を使って主張する、対話することを学ぶ。
 3限目 宣言を実際に使って出来ることを考える。
  教科書の「あなたのクラスの人権宣言をつくるために、一つだけ世界人権宣言の条文を使うとしたらあなたは何条を使いたいと思いますか。またそれはなぜですか。」を行う。各自の振り返りとして行っても良いし、グループに分かれてグループで使いたい条文を話し合っても良い。
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