道徳教育の評価について
2018年度から教科となる「道徳」は、指導要録に評価を記入する欄ができます。
評価について文部科学省は指導要領の解説で説明しています。
この指導要領解説書をもとに、
Ⅰでは、2018年度から行われる評価についてQ&Aという形式で要点を説明します。
Ⅱで、おおもとになっている学習指導要領解説の、
評価について記述されている部分を掲載し、どのように読み解いていったらよいかをコメントという形で説明しています。
各コメントには番号がついています。
Ⅰ 学習指導要領解説「特別の教科 道徳」編 第5章「道徳科の評価」Q&A
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1. 道徳科の評価は子どもの内面を見ようとするのですか。
そうではありません。授業のねらいとの関わりで子どもの学習状況や成長の様子を見ようとするものです。
道徳教育の目標には「道徳性を養う」ことがありますが、道徳性は子どもの人格全体に関わるものであるから
数値などによって評価してはならないと述べ、学習の様子、取り組み状況などから成長の様子を見るのだと言っています。
このことは観点別評価はしない、と言っている、コメント9の部分とも関係があります。
コメント4,7,9 -
2. 道徳科では数値による評価はしないと言っていますが、記述によって段階別に行うことは良いのでしょうか。
記述の表現によって取り組みの優れていた子どもと、そうでもない子どもを分けるというようなやり方をするということです。記述による段階別の評価も想定していません。
道徳性は個人の問題である、道徳的な価値を理解したかどうかの基準は設定しない、などの記述からそう読み取れます。
また、個人内評価であることからも段階別に評価を行うのは適切ではないと思います。 -
3. 個人内評価というのはどういうものですか。
個人の変化、成長に注目して行う評価です。
「個人内評価」は、子どもごとのよい点や可能性、進歩の状況などを積極的に評価しようとするものです。
物差しはあくまでその個人だということです。
なぜ個人内評価をするのかというと、道徳性というのはあくまで個人の問題であり、個々人で違いがあることが前提だからです。
個人内評価をするためには本来は個人別の指導計画が必要ですが、
大変な負担になるのでやり方については学校の実情に応じた検討が必要だと思います。
個人内評価であることは、発達障害等のある子どもや外国につながりのある子どもへの配慮について考える際、特に重要であると述べています。
コメント7,8、15,16 27 -
4. 学習活動に着目して評価する、と言いますが、内容項目は重要ではないのですか。
内容項目は手がかりだと言っています。
内容項目をおぼえるとか、例えば「思いやり」を持たなければならない、
と言うことが大事なのではなく、具体的な状況の中で「思いやり」について考えることが重要です。
光村図書の6年生版に「最後の贈り物」という話しが掲載されています。
道徳の教科書では「最後の贈り物」のように自己犠牲をすることで、
対象の人に「思いやり」を示す人が多く登場しますが、そうしたやり方に疑問はないでしょうか。
自分がその立場だったら自分を犠牲にして「思いやり」をするでしょうか。
また、お金をあげることが本当にその人のためになるでしょうか。
いろいろなことを考えると何が思いやりかを簡単に決めることはできないのではないでしょうか。
こうしたことを考えることが大事だということです。
コメント12 -
5. 学習活動に注目して評価するという時、それは内容項目毎に評価すると言うことでしょうか。
違います。大くくりなまとまり、と表現していますが、
大くくりなまとまりとして例示的にあげられているのは年間、学期というまとまりです。
例えば「自分自身に関すること」を大くくりなまとまりと考えているわけではありません。
学習状況に注目して評価するので、大くくりという言葉も「内容項目」の大くくり、ではなく、
年間や学期などの時間的なまとまりが想定されています。
コメント11,13、20 -
6. 評価のための具体的な工夫としてどのような例が考えられていますか。
ポートフォリオ評価やパフォーマンス評価があげられていますが、
その場合でも成果物自体を評価するのではなく、学習のプロセスが大事だといっています。
例えば道徳の授業で行った学習活動の要点を子どもが文章でまとめるのはパフォーマンスですが、
その文章の善し悪しを評価するのではありません。
また、子どもがまとめた要点を記録しておいてファイルに綴じればポートフォリオということになります。
子どもは記録がまとめられているポートフォリオを見て自分の学習を振り返り、次の学習につなげていくことができます。
「自分の学習を振り返る」ことが子どもの自己評価ということになります。
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7. 通知表にも道徳科の評価を書いた方がよいのでしょうか。
解説は、通知表についてはまったく触れていません。
学校管理規則等、特別に規定がある場合を除いて、通知表は様式も含めて学校が決めることだからです。
地域、子どもの実態を踏まえて学校が決めていけばよいと思います。 -
8. 実際の評価文についてはどんな内容が考えられるでしょうか。
例えば「自分とは違う考え方や感じ方に触れ、
多面的、多角的に考えることができた」という書き方が考えられます。
こういう評価を見れば、子どもは、「自分とは違う考え方」を聞くことはよいことだ、と考えるようになるでしょう。
「“はしの上のおおかみ”の学習では、親切にしたときの喜びについて考えることができた。」
という書き方だと、正解を示すことになり、子どもたちにこれが正しい答えなんだ、これからも正解は何か、考えていこう、
ということになってしまいます。また、個々の教材の内容に関連して評価していますが、もっと長い学習活動の中で見ていくことが必要です。
見方も多面的ではないように思いますが、いかがでしょうか。
道徳的なテーマを考えることは自分の中の価値観を検討することになるので迷うこともあると思います。
小学校高学年になれば家庭の中で作られてきた価値観を子どもたちなりに持っているでしょう。
それと違うことを聞けば反感を持ったり、迷ったりすると思います。
そういうことを繰り返しながら自分なりの価値観を作っていくことになるはずです。
「成長の様子」というのはそういうこと全てを含むことではないでしょうか。
成長すなわち目に見える進歩、でなくても構わないし、「成長」の表現の仕方もいろいろとあって良いのではないでしょうか。
Ⅱ 「第5章 道徳科の評価」とコメント
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第1節 道徳科における評価の意義
(「第3章 特別の教科 道徳」の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の4)
児童の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要がある。
ただし、数値などによる評価は行わないものとする。 -
第2節 道徳科における児童の学習状況及び成長の様子についての評価
(1)道徳科に関する評価の基本的な考え方
(2)個人内評価として見取り、記述により表現することの基本的な考え方
(3)評価のための具体的な工夫
(4)組織的、計画的な評価の推進
(5)発達障害等のある児童や海外から帰国した児童、日本語習得に困難のある児童等に対する配慮